~ギターの健康診断に行ってきました~

今回のギターショップ探訪は特別編としてギターのメンテナンスについてご紹介してまいります。

湿気の多い梅雨や暑い夏は、人はもちろん、ギターにも堪える季節です。大切なギターを守るためにも、ぜひご一読くださいませ。なお今回は、経験に基づいた確かな知識を記事にするため、自分のギターを持ってウッドマンの山崎さんを訪ねました。題してギターの健康診断。それでは、さっそくスタート!

まずは、ギターの健康状態をチェック!

「やはり木は呼吸していますからね」といいながら、 持参したギターをケースから取り出すと、まずボディを叩き始めた山崎さん。コツコツコツ、コツコツコツ。その姿はどこか医者に似ている。聴診器をあてる感じとでもいえるだろうか。ボディのいろんな箇所を叩いたり、鏡でのぞき込んだりしている。そのワケは?

ギターのボディチェックの写真

実はギターには、ボデイの補強と弦振動を効率良く板に伝えるために、ブレイシングという木がボディ内部に貼られている。サウンドを左右するとても重要な部分なのだが、ボディを叩いた時の音で、そのブレイシングの剥がれが確認できるのだという。例えば、通常だとコツコツといった固い音が、剥がれていると木と木がぶつかる音がするそう。実際には剥がれ音の識別も慣れが必要になりそうだけれども…。

「ブレイシングは大丈夫そうですね」

まずは第一関門クリア! 次にすかさず紙を取り出しブリッジにあて始めた。

ブリッジの剥がれのチェックの写真

「ブリッジが剥がれていると紙が入ってしまうんです」。アコースティックギターでは、ブレイシングだけでなくブリッジの剥がれも結構ある。剥がれるということはボディにも音が伝わりづらいし、チューニングなどへの影響もあるだろう。合わせて指板の剥がれもチェックしている…。

突然ですが、ここで少し前提を整理!

四季のある日本では気候変化によりギターも体調を崩しやすい。特に、湿気の多い梅雨や夏、乾燥する冬には”ギターへの気配り”が必要だ。それでもなかなか完璧には管理できないし、どうしても調子が悪くなる時がある。症状としては以下の感じだ。

矢印マーク

・ブレイシングやブリッジの剥がれ
・ネックの順反り、逆反り
・必要以上のトップの膨れ上がり
・ボディ各所の板割れ など

上記のような状態になると、一般的に音がビリついたり、弦高が高くなって弾きづらくなったり、チューニングも合いづらくなったりと、ひとことでいうと演奏性が悪くなるのだ。

前提終わり。

話しを元の流れに戻そう。

山崎さんがなにやらタッピングのようなしぐさを始めた。

ネックの反りのチェックの写真

「こうするとアコギのネックの反りなどが、一般の方でも簡単にチェックできるんです」

どうするかというと、
まずは1弦。左手で2フレットを押さえ、右手の小指で12フレットを押さえてから、真ん中あたりの6フレットのフレットと弦との隙間をチェック! 軽く右手の人差し指でフレット真上を叩いてみても良いかもしれない。音がすれば隙間があるし、逆に隙間がなければネックが逆反りしている可能性がある。そして6弦も同様にチェック。

ちなみに1弦側で隙間に紙が1枚入るくらいが適正のようだ。

少しディープなつぶやきだが…、
なぜ2フレットを押さえるかというと、どういうわけか1フレットが高いギターが多いんですよね

なるほど、わかったような気になる。話をすすめよう。

様々なネックのチェックの写真

この方法の他にも、ネックを上から見たり、スケールをあててみたり、さまざまな角度からネックの状態を確認。もし反っていれば、ジョイント部分も影響しているのか、単純にネックの反りなのかも合わせて見ているそうだ。

やはりプロは確認の仕方がツボを得ていて、すばやく丁寧。勉強にもなり、楽しくもあり。

なお、ネックは”まっすぐ”が基本だが、実は”気持ち順反り”が適正でしょうとのこと。この”気持ち”は恐らくプロの領域。

でも、誤解を恐れずにいうと、必ずしも厳密にまっすぐである必要はなく、そのギターとプレイヤーにあったネックの状態であれば良いのかもしれない。あえて、順反り、あえて逆反り(笑)

実際にフィンガー・ピッカーの中には、逆反り気味の方が弦高を低めにできるので好きという人もいるそうだ。

日常的なギターへの気配りについてもお話を伺いました。要チェック~です!

□適正な湿度について

湿度は50~55%が理想的。乾燥する時期は加湿器を使うのがおすすめだが、その際、直接、蒸気があたらないように注意が必要とのこと。できれば気化式のものが最適だそうだ。また、直射日光を避けて、風通しが良いところに置ければベストだ。

□日常の手入れ

オレンジオイルの写真普段の手入れはクロスの乾拭きで十分だそう。弦を取り換えるときにオレンジオイルで指板を拭く程度でOKだ。

なおポリッシュは汚れや汗を取る時には良いが、塗装の状況によるので、使用には注意が必要。特にヴィンテージギターには使わない方が無難。自分も大切なDoveのボディを曇らせてしまったことがある(泣)。

「ポリッシュを使う時には楽器には直接吹きかけないで、クロスにポリッシュをつけて良く揉んだのちに、目立たないところから拭いてみることをおすすめします」とのアドバイス。

使い込んでいたり、年月が経っているギターは特に気をつけましょう!

□カンタン!弦の緩め方

弦を緩める、緩めないには賛否両論がある。ギターには個体差があるし、好みもあるので無理もないだろう。ただネック反りのリスクを減らすには、やはり毎日でも緩めた方が良さそうだ。

「4,5,6弦のペグのつまみをひと回しぐらい緩めると良いかと思います」

弦の緩め方の図

なるほど~! 自分みたいに弦を緩めるのが面倒で苦手な人にとって、この方法は救世主的だ。これならできそう。すべての弦を緩める手間がないし、ひと回しと決めておけばチューニングするのも楽だからだ。

ちなみに弦は緩めれば緩めるだけいいだろう…というのは誤解で、逆反りしやすくなるらしい。さらに補足すると、ソリッドのエレキギターであれば特別に太い弦でも貼っていない限り、チューニングはしたままでOKだそうだ。

さて、最後にこの時期。夏の炎天下でのギターの使用はできるだけ避けた方が無難とのこと。特にラッカー塗装だと、塗装が柔らかくなってしまうらしい…なるほど。また腕のあたる場所は汗と熱とのダブル要因で、ラッカーが変質しやすい状況にもなるそう。さらに、ケースに入れたまま車の中に置きっぱなしにするのも危険だ。

ここまで取材して、わかった気がした。

それは結局は人間にとって不快だと思うことはギターでも避けるべきということだ。
例えば冬場の乾燥状態だと肌はかさかさ、風邪をひきやすい。また炎天下の車の中に留まっていることはできないし、じめじめしている気候も苦手だ。

そう感じた時、よりギターが身近なものと感じられた。さらに大切にしていこう!

取材協力:ウッドマン

(取材  望月成恭)